大井研究室 Research

アンモニウムホスフィン

新しい不斉触媒をつくり続けてきた私たちだからこそ、強く思うことがあります。それは、「高性能な不斉触媒をもっと簡単につくりたい」、「そのための画期的な概念を生み出したい」ということです。不斉触媒は、化学反応の促進と、結合形成時の立体化学の制御という二つの機能をもつキラルな化合物です。金属に結びついて触媒としての機能を引き出す不斉配位子も同様であり、反応活性を創出と立体化学の制御の二つの役割を担います。しかし、この二つの役割を一つの分子で充足させようとすると、分子構造が複雑になりがちであり、その結果、新しい不斉触媒あるいは配位子の開発の際に、合成の困難さが研究の進展を妨げることになります。
私たちは,不斉配位子としての高い機能を備えつつ、構造を簡略化するために、配位子が担うべき二つの機能を二つの分子に分担させることを考えました。すなわち、不斉配位子を、反応性を引き出すためのアキラルな配位子と不斉環境を形づくるキラルな分子の二つに分け、両者をイオン間に働く静電相互作用によって引き合わせることで、簡単に合成できる高性能な不斉配位子を創製しました。また、この配位子とパラジウムからなる触媒を用いることで、不斉四級炭素構築をはじめとする高難度な立体選択的炭素−炭素結合形成反応を実現しました。

ページの先頭へ