メッセージ

堀研究室が目指すもの

 私は研究室のミッションを「人々の幸福や地球環境保全に貢献する研究を行い、人材を育成すること。生命の本質を明らかにし、世界平和に貢献すること。」としています。

 ノーベル賞受賞の対象となったiPS細胞や再生医療、遺伝子治療など、すばらしい研究成果が出ています。これによって我々の健康や医療は画期的な進歩を遂げつつあります。しかし一方で、地球温暖化、化学物質による汚染、資源の枯渇、食料危機などにより、人類や地球生命が存亡の危機に立たせられています。せっかく我々の健康を維持する技術が発達しても、生きていく基盤の環境が破壊されては元も子もありません。

 当研究室では、これらの問題の解決を目指し、微生物をターゲットとした研究を行うとともに、これら諸問題に果敢に取り組む人材を育成しています。微生物には、病原菌など我々にとって好ましくないものもいますが、多くは分解者として生態系を支えています。環境の掃除屋である微生物なくしては、生態系は成り立ちません。この微生物を積極的に利用することで、環境浄化や廃水処理はもちろん、バイオマスエネルギーの生産や、環境に優しいグリーンテクノロジー、環境保全型農林水産業まで可能になります。分子生物学をはじめとする最新のバイオテクノロジーを利用して、効率のよい実用的なプロセスを構築することを、当研究室では目指しています。それによって、温暖化や生態系の破壊をはじめとする地球環境問題の解決に貢献していきます。

 微生物、中でも細菌(バクテリア)は最も単純で原始的な生物です。これを研究することで、生命の本質や進化の謎に迫るかもしれません。単純な生命体といえども精巧な生命のしくみをもっていることを知ることは、命の尊さを実感することにつながります。そこから我々の“生きる意味”にまで考えが至る事でしょう。また、この単純な仕組みを利用して、新しいテクノロジーを生み出すことも可能です。当研究室では、バクテリア細胞のもつナノファイバーなどの超分子を、ナノマテリアルとして利用するナノバイオテクノロジーにも積極的に取り組んでいます。さらに、究極的にはバクテリア細胞を手本に、人工細胞を合成することを目指しています。これを合成生物学と言います。

 当研究室の特徴は、基礎研究から実用化までを一貫して手掛けていることです。基礎研究では、分子レベルのメカニズム解明や新しい理論の構築に取り組んでいます。実用化に向けた応用研究では、企業との共同研究はもとより、成果の商品化を図り、実際に生産工場まで立ち上げております。近い将来、これでビジネスを行い、得られた利益を新たな研究資金に回すというようなシステムを構築する計画です。これによって、経済に貢献するとともに、新しい国立大学法人の在り方を示すことも企図しています。

 以上、当研究室では、目先の成果や利益にとらわれず、人類の真の幸福や地球環境、生態系の保全などを見据えた科学技術の発展と、そのような視点に立って行動ができる人材の育成を目指しております。この趣旨に共感していただける多くの方々に、学生、共同研究者、または協力者として、当研究室の活動に参加またはご支援していただけることを、研究室の主催者として切に願っております。