排水処理・環境浄化

河川などに生息している微生物の分解により、河川は流れる間に有機物を分解する自浄作用を持っていますが、一度に多くの有機物が河川に流れ込めば、微生物による分解が追いつかなくなり、水質汚濁が進みます。
この水質汚濁を防ぐためには、有機物を分解除去するための排水処理が必要になります。その基本的な方法論は、河川の自浄作用を促進することです。微生物による有機物の分解を促進し、多様で無数の微生物によって構成される生態系のメカニズムを利用し、有機排水を効率的に処理することを生物処理技術といいます。
近年、微生物についての技術が飛躍的に進歩しており、さらに、新材料の利用や他の技術との融合により、より効率的な生物処理技術が登場してきています。

堀研では、微生物を用いた排水処理・環境浄化の研究を続け、社会実装を目指しています。

油脂分解

油脂分解機能に優れた微生物を開発し、実排水中の高濃度の油を驚異的な速度で分解除去できるシステムを開発しました。
リパーゼを分泌し油脂を加水分解する微生物と、分解産物であるグリセロールを消費する微生物との共生関係を巧みに利用しています。
現在この研究は、JSTのA-STEP事業に採択され、社会実装間近となっています。

プレスリリース
いままでの採択プロジェクト
  • 経済産業省 平成22年度戦略的基盤高度化支援事業
    「食品廃棄物からの高活性・高安定性厨房排水処理用バイオ製剤の効率的生産プロセスの開発」
  • 経済産業省 平成22年度次世代先端技術育成事業
    「ボトムアップ型油脂分解バイオフィルムによる厨房廃水処理技術の実用化」

メンブランバイオリアクター

膜を用いて活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥法 (membrane bioreactor, MBR) は世界の水処理現場で導入が進んでいます。MBRの欠点は、膜の目詰まり(ファウリング)で、その主要な原因はバイオフィルムや微生物の活動に伴うものです。
堀研では、膜製造企業との共同研究により、下水処理における精密ろ過膜の真のファウリング物質を明らかにし、これを防ぐ全く新しい技術の開発に成功しました。

生物膜法(バイオフィルム法)

「ぬめり」「水垢」といわれるものは、身近なバイオフィルムの例です。バイオフィルムは、粘着性の細胞外高分子 (EPS) を分泌して形成され、水処理を含む各方面で注目されています。
バイオフィルムは、医療機器の微生物汚染やインプラントを通じた細菌感染症を引き起こしたり、抗生物質抵抗性を示したりと、医療現場では大きな問題となっていますが、水処理の分野では古くから生物膜法として利用されています。河川の自然浄化機構も、川床の石や礫、水辺のヨシなどに形成されたバイオフィルムにより、有機物を分解しています。
一方、炭素繊維による河川や湖沼の浄化も注目を集めています。その浄化のメカニズムはバイオフィルムによる異化分解です。しかし、炭素繊維に微生物や汚泥が付着するメカニズムは、これまでよくわかっていませんでした。
炭素繊維製造企業との共同研究により、この現象を微生物細胞と繊維表面との物理化学的相互作用で記述し 、炭素繊維が優れた水質浄化用バイオフィルム担体であることを理論的に証明しました。

プレスリリース